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なぜ?若手に広まる「会社を頼るな」という風潮

なぜ、心が折れる職場になってしまうのか?(後編)

■帰属意識がない社員たち

 チームに貢献しようとしない社員も、職場では問題になっています。

 上司の悩みとして、「なぜ、もう少し想像力を働かせて、チームのためになる動きをしてくれないのか」という声をよく聞きます。たとえば、隣の席でトラブルが発生していても無関心で、サポートしようとしない。顧客からのクレームに対して、「私の担当ではないのでわかりません」とガチャンと電話を切ってしまったりする──。自分の守備範囲内でしか仕事をしない社員が増えていくと、連携不足による抜け漏れやミス、顧客からの信頼失墜、ビジネスの機会損失を招きかねません。

 ここで「今どきの社員は帰属意識が薄い」と非難することは簡単ですが、部下をそうさせている責任の一端は上司側にもあるのではないでしょうか。なぜなら、そもそも部下の多くはなぜチームに貢献しなければならないのか理解していません。仕事の目的やチーム全体における自分の役割を、上司から教えてもらったことがないからです。

 私自身の経験をお話ししましょう。サラリーマン時代、私の職場でもチームワークの不在、部署間の連携不足が問題視されていました。私が就職情報誌や就職情報サイトなどを統括する編集長に就任したとき、チームリーダー一人ひとりと面談し、「あなたの仕事は何ですか」と質問してみたのです。ある人は「私の仕事は営業推進です。営業に対して商品情報を伝えています」と答え、ある人は「私は進行管理担当として、制作会社とやり取りしています」と答えました。誰もが自分の担当業務については説明できるし、真剣に取り組んでいます。

 しかし、誰一人として、「チーム全体が何のために働いているのか」という目的を語る人はいませんでした。その就職情報誌でいえば、「よい就職をしたいと願う学生の就職活動を応援する」ことが目的としてあってしかるべきですが、そういった目的を意識しながら仕事をしていた人はいなかったのです。チーム全体の目的が共有されていなければ、メンバーが自分のことだけを考えて仕事をするのも無理ありません。

 私は再びメンバーを集め、自分たちの仕事の目的を確認するとともに、それぞれの持ち味を活かした役割があることを組織図で説明しました。すると、日々モヤモヤしていた部下から順に「あぁ、そうか」と気づき始めるわけです。隣のメンバーがどんな役割を担い、自分の仕事にどうつながっているのか。それが理解できると、「他のメンバーが困っていたら助けよう」「この作業はお互いに連携しながらやったほうがいいね」などと、チーム全体を意識した発言が飛び出すようになりました。

 チームへの帰属意識は、部下との丁寧な対話を通して育てていくものです。「もっとチームに貢献してほしい」と上司は苦言を呈する前に、部下の帰属意識を高めるための働きかけをしてきたのか、自分に問いかけてみてほしいと思います。

初出:『なぜ、心が折れる職場になってしまうのか?(第2回)』ほんきになるWEB 2016年9月23日配信記事を、改題し再構成しました。

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前川 孝雄

まえかわ たかお

(株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師

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大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「上司力研修」「育成風土を創る社内報」「人を活かす経営者ゼミ」などを手掛け、約300社で人が育つ現場づくりを支援。自らも年間100本超の講演、TV番組、雑誌に出演。YAHOO! 「前川孝雄の人が育つ会社研究室」など連載も数多く持つ。


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